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3つの短編で構成されたこの本。特に印象に残るのは表題の「故郷忘じがたく候」。秀吉による朝鮮遠征時に日本につれて来られ、日本で行きて行くしかなかった朝鮮の人達。薩摩の地で朝鮮伝来の焼き物を代々作り、その優美な白薩摩は島津藩に愛される。その作陶の14代目、薩摩人より薩摩人らしいと言われた陶芸家の沈氏を描いた物語、というよりエッセイのような話。他の氏の本に比べて割と淡々と少し乱雑にも思えるその文。でもその文体が返って沈氏の生き方を浮かび上がらせているような。最後の演説の場面はその風景が浮かび胸に迫る。